【セミナー報告】講演2:「トヨタや海外のリーン経営に”死ぬか生きるか”を学ぶ」~日本はもう既に瀕死状態になっている~

講演2:「 トヨタや海外のリーン経営に”死ぬか生きるか”を学ぶ」
~日本はもう既に瀕死状態になっている~

高木 徹 氏
豊田マネージメント研究所 副社長

近年Lean(海外におけるトヨタ生産方式)を導入している企業は世界的に見てここ数年大きく飛躍している。海外では改善リーダーとして会社を変えていく人材が150万人存在しており、またアメリカにおいて「ブラックベルト」と呼ばれる日本のTMS3級に相当する人材に関しては30万人存在している。現在成長している欧米の企業は日本に数多く参入してきており、これが消費者の観点からすると、海外のブランドが入ってきた目新しさがあるかもしれないが、マーケットの視点から見ると日本の市場を占有しようとしている危機的状況にあり、この成長の根源は海外の経営方針がLean経営に変わってきているという点である。

海外企業においては、Lean経営を取り入れ、企業を成長させ、本気で変えていこうとするマインドがあり、それが顕著に分かる取り組みとして「ブラックベルト」と呼ばれる人材(市場価値で言えばおおよそ年収1000万円で取引するなど中枢を担い、旗振りする人材)により企業を変えていこうとしている。これだけ危機感を感じている証拠である。逆に日本では改善の資質があったとしても、本気で育成をする企業を変えていこうとする経営者は少なく、ブルーカラーでは出来たとしても、特にホワイトカラーになると組織構造が出来ないと思っているため、現状踏み出せていない状況である。

日本の考え方やマネジメントの仕方はどんどん海外に出ていっており、特に欧米ではそれらを積極的に取り入れている。しかし、日本企業は海外のものを取り入れようとしており、奇しくもレベルダウンを引き起こしているのが実態である。スウェーデンの一事例「流れを意識したスマートな仕事」で言えば、とりわけスウェーデンではLeanを推進し、国をあげて組もうとしており、製造企業だけでなく病院や税務署、学校などの組織においても実践をしているのである。このように見ても日本生まれのLeanはスウェーデンではスタンダードになりつつあり、サービスにも入ってきている。Leanと言えば、製造業に特化していると思われがちだが、広くサービス業にも浸透している。Leanは、付加価値のある仕事に従事している実感が持てる、同僚との連帯感も得られる、つまりは職場の活性化に繋がる。そして高みを目指すといったチャレンジ感、そして価値の流れを作るというのは働く人の満足や成長にも繋がると言える。海外ではこれを取り入れ、当たり前のように実践しており、利益に繋げているのである。

専門職学位にMBA(経営学修士)があるが、MBAは知識のものであり、実践とは異なる。マネジメントとなると実践力が必要、つまり経験知が大事である。海外の経営者はトヨタを学び、「なぜそこまでトヨタが強いのか」「なぜそこまで利益が出るのか?」ということを徹底的に研究している。日本の文化にトヨタは根差しており、そういった文化までも研究し、海外に持ち帰りリーンスタートアップやグーグルといった組織を作っていくことになる。
逆に日本は知識型のマネジメントであり、某企業の階層別教育やコンサルティングなどもあるが、研修してもマネジメント力は上がらないのが現実である。ところがトヨタの中ではOJT研修の中でマネジメントが存在しており、共通の価値観や原理原則がきちんと浸透している。企業というのは、大きくなればなるほど摩擦が増えてくる。特に組織横断的に動こうとする。いわゆる営業からマーケティングなど共通の価値観で動くことがなく、そこには時間やコストなどが大量に発生しているのが現状でそこから脱却する必要があるのである。

海外から見れば日本は弱くなったと言われるが、弱くなったわけではなくリファレンスするところや勉強の仕方を間違えているのである。座学から知識として学び安心している状況ではなく、危機的状況であると認識し会社を変えていくといったマインドを持つことが重要であるのだ。これだけ海外でLeanが浸透したことで懸念されるのが、海外が強くなったことである。だからといって、Leanが絶対的に良いかと言えばそうでもなく、今現在Leanを凌駕するマネジメントを研究しており、今後それを装備し活用していくことが課題であると考えている。

Leanを超えるマネジメント

1.マネジメントの標準化
まず、成功体験に基づくマネジメントを捨てる。共有の価値観・原理原則を浸透させることが企業のスピード、意思決定のスピードを早くしていくことになり、また逆にこれがないとマトリックス組織ができない、横の動きが成立しない。TMS4級、3級では、これを作っていくための土俵づくりということになる。
2.経営スピード化
経営者、役員など上と下と繋げていき、いかにスピードを上げていくか。これを意思決定し、会社一丸となってやっていくといった気概がないとやれない。

マネジメントをやっていくとなると、社長から社員の一気通貫で全体的にどういったことが浸透していないといけないかということを考える必要がある。例えばマネジメントの原理原則であれば、これは成果を出すマネジメントに当たるが、いわゆる価値を最大化させる、自分たちの価値の最大化と徹底、この考えを社員全員に持たせることが必要であり、浸透、定着させることで数値としての成果が出てくるようになるのである。

マネジメントとは何か?ホワイトカラーも含めマネジメント力を高めるにはどうしたらいいのか?
究極を言えば、「習慣を変えていくこと」である。

一般的によく方針転換と言われることが多いが、TMSで言う方針を変えるとは、横串を刺していくことである。これは売上や利益といった話ではなく、会社を強くするための方針を立てることであり、会社組織をどう強くしていくかという方針を立て横串を刺していく。といったことからも、普通の会社の方針転換とは意味合いが異なるものである。これが定まると、会社を強くするための方針が横で動いていくようになり、それぞれに対して的確かつ真摯に取り組み、組織として強くなっていく。また、立てた方針が上手く成り立っているかどうかフィードバックすることも重要である。更には人事評価も重要である。業績に対するフォーカスだけでなく、人に対する評価、つまり人間性、人間力、改善能力であるといった評価にも目を向けることが必要である。

人を見るときに留意してもらいたいのが、「技術力」と「マネジメント力」を分けて見てもらいたいということ。それぞれの人材において、技術力はどうなのか、マネジメント力はどうなのか。勿論両方が秀でているのが最もであるが、例えば海外において優れたエンジニアはこの両方が兼ね備わっており、先述したブラックベルトがそのいい例である。旗振りをする人材、世の中はマネジメント力の高い人材に価値を覚えているという結果である。「知行合一」という言葉があるが、いわゆる多くを知る人材よりも、知識もありつつそこに実践が伴わなければならないと考える。

要するにマネジメントの定義とは、「管理をやめ、自律型のマネジメントに持っていき、見える化する」管理から脱却すること、自律型にシフトすることで必ず会社全体が変わっていくと考えている。

 

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